スタンプカードの作り方|還元率より「次に来る理由」
特典に届くまで何か月かかるか、計算したことはありますか。欄の数と来店頻度、最初に押しておく2つ、特典の本当の負担、レジでの一言まで、個人店のスタンプカードを組み立て直す手順です。
AIの支援を受けて執筆し、事実確認を行いました。
財布の中に、半分も埋まっていないスタンプカードが何枚入っているか数えてみてください。お客さまの財布も、だいたい同じ状態です。スタンプカードの作り方でよくある失敗が、「20個たまったら大福1個サービス」のカードを月に1回来るお客さまに渡すことです。特典に届くのは1年8か月後です。
それはもう次に来る理由ではなく、財布の場所を取るだけの紙です。カードを作るときに最初に考えるべきなのは、還元率を何%にするかではありません。お客さまがレジの前に立ったまま「あと少しでもらえる」とわかるかどうかです。
この記事は、和菓子屋、花屋、コーヒースタンド、八百屋、文房具店のように、店主がカードの中身を決め、スタッフがレジで手渡す規模のお店を想定しています。店主が決めることが中心で、途中にレジに立つ人がそのまま使える一言も入れています。
スタンプカードの作り方は「欄の数 ÷ 来店頻度」から
特典までの距離は、次の割り算でほぼ決まります。
満了までの週数 = 有料の欄の数 ÷ 1週間あたりの来店回数
下の表の来店頻度は、説明のための仮の数字です。業界の平均ではないので、ご自分のお店の常連さんの数字に置き換えてください。
| お店(例) | 来店頻度(仮) | 有料の欄 | 満了まで |
|---|---|---|---|
| 駅前のコーヒースタンド | 週4回 | 10 | 約2.5週間 |
| 和菓子屋 | 週1回 | 10 | 約10週間 |
| 花屋 | 月1回(週0.25回) | 10 | 約40週間 |
同じ10回のカードでも、コーヒースタンドなら3週間足らず、花屋なら9か月以上かかります。私の目安は「満了まで3か月以内」です。季節がひとつ変わる前に、一度は特典を受け取ってもらいたいからです。超えるなら欄を減らします。月1回のお客さまが中心の花屋なら、有料3回で「次回200円引き」くらいがちょうどいい。10回先の大きな特典より、3回先の小さな特典のほうが次の来店を引き出すと私は考えています。
来店頻度は、顧客ごとの購入履歴があればそこから数えます。なければ、スタッフに常連さん5人の顔を思い浮かべてもらい、「この人は週に何回来ているか」を聞くだけでも、この表を埋めるには十分です。
同じ物を買う店はスタンプ、買う物がばらばらな店はポイント
スタンプは「1回来たら1個」なので、毎回ほぼ同じ物を買うお店に向いています。コーヒー1杯、団子1パック、いつもの食パン。特典も「同じ物を1つ無料」にすれば、お客さまは何がもらえるかを想像しやすくなります。
八百屋や文房具店は事情が違います。ある日は長ねぎ1本で150円、別の日は家族の1週間分で3,000円。これを同じ1個として数えると、たくさん買う人ほど損をします。こういうお店は、金額に応じて付けるポイントのほうが公平です。中間案として「1会計500円ごとにスタンプ1個」にすれば、スタンプのわかりやすさを残したまま金額の差を拾えます。
ポイントには「距離が見えにくい」という弱点があります。100円で1ポイント、100ポイントで100円引きのお店で「残り34ポイントです」と言われても、近いのか遠いのか、お客さまにはわかりません。伝えるときは円に直して、「あと3,400円のお買い物で100円引きです」と言い換えてください。距離が見えて初めて、ポイントも再来店のきっかけになります。特典の金額は、店頭の値札と同じく税込でそろえておくと、お客さまもスタッフも迷いません(値札の見直しは総額表示の値札チェックの記事にまとめています)。
金額に応じたポイントを紙で数えるのは手間がかかるので、ポイント制にするならレジ側で記録することになります。VoViなら、何円で何ポイント付けるか、1ポイントを何円とするかをお店が決めて、会計のたびに自動でたまります。ポイントとスタンプカードはProプランの機能です。
最初の2つは押して渡す。ただし欄も2つ増やす
新しいカードを渡すとき、最初の2つの欄を押しておきます。ここで大事なのは、欄も2つ増やすことです。有料で10回来てもらうカードなら、欄を12個にして、1つ目と2つ目は最初から押しておく。今日の分は3つ目に押します。お客さまが払う回数は10回のままなので、お店の負担は変わりません。
考え方のもとになっているのは、マーケティング研究者のヌネスとドレーズ(2006年)が洗車場で行った実験です。ペンシルベニア大学ウォートン校の記事によると、洗車場の客300人に、8欄のカードと、10欄で2つ押してあるカードを配って比べたところ、2つ押してあるほうが最後までためる人が多く、ためるのも早かったそうです。必要な洗車の回数はどちらも8回。違いは「もう始まっている」と感じられるかどうかだけでした。おまけで押す数を実験と同じ2つにしているのは、このためです。
欄を増やさずに2つおまけで押すと、それは単に特典を2回分前倒ししただけになります。効かせたいのは「進んでいる感じ」であって、割引の上乗せではありません。
欄が少ないカードでは2つも押せません。花屋の有料3回のカードなら、4欄にして1つ押す、くらいが同じ考え方の応用です。ただ、実験で試されたのは10欄に2つの形なので、1つ押しでどこまで効くかは確かめられていません。
特典の負担は「仕入れ値〜売価」の幅で見る
「10回で1杯無料は還元率10%、うちには厳しい」と考えて、特典を小さくしたり欄を増やしたりしていませんか。その計算は、無料の1杯をまるごと売価で見ています。実際の負担には幅があります。
例で計算します。数字はすべて仮のもので、業界の相場ではありません。ご自分の売価と原価を入れてください。
- コーヒー1杯の売価:450円(例)
- 1杯の原価(豆・カップ・ミルク):90円(例)
- カード1枚で買ってもらう杯数:10杯、売上4,500円
- 売価で見た負担:450円 ÷ 4,500円 = 10%
- 仕入れ値で見た負担:90円 ÷ 4,500円 = 2%
無料の1杯が、ふだんなら頼まれなかった1杯なら、お店が失うのは仕入れ値の90円で、負担は2%です。ただ、その1杯がもともと買ってもらえるはずの1杯なら、失うのは売上の450円です。実際の負担は、2%と10%のあいだのどこかにあります。この幅がわかれば、欄を減らして特典を近づける余裕があるかどうかを、勘ではなく数字で判断できます。
2%に近づけるコツは、お客さまがふだんは買わない物を特典にすることです。いつもMサイズの人に「次の1杯をサイズアップ無料」にすれば、お客さまはいつもの1杯の代金を払い、お店が負担するのはサイズの差の分の材料だけです。別の商品に変えるのではなく、同じコーヒーのサイズを上げるだけにしておくのが肝心です(理由は後半の景品表示法の項目で)。
ポイントで「100円引き」にする場合は、商品を渡すのではなく代金から100円を引くので、負担はそのまま100円です。仕入れ値に置き換えることはできません。花屋の「次回200円引き」も同じで、負担は200円です。
もうひとつ。満了しないまま財布で眠っているカードの分を「原価が浮いた」と数えないでください。それは得ではなく、カードが働いていないという知らせです。
渡すのはお釣りと一緒に。注文中には渡さない
ここからはレジに立つ人の話です。カードを渡すのは、お釣りとレシートを返すときです。注文中のお客さまは何を買うかを考えていて、後ろには次の人が並んでいます。そこでカードの説明をしても、半分も聞いてもらえません。お釣りを受け取るときなら、お客さまはもう手を出していて、ひと言聞く余裕があります。
言うことは一文だけ決めて、スタッフ全員で同じ言葉を使います。12欄のカードで、おまけの2つと今日の分を押してから渡すなら、こうなります。
「スタンプカードです。おまけで2つ押してあって、今日の分も押したので、あと9回でコーヒー1杯サービスです。」
残りが9回なのは、今日の1杯がもう3つ目の欄に入っているからです。今日の分を押す前に渡すお店なら「あと10回」になります。どちらの渡し方にするかを決めて、数字をそろえてください。入れるのは「残りの回数」と「もらえる物」の2つだけです。2回目以降も同じで、「6個たまりました」より「あと6回です」のほうがゴールの近さが伝わります。レジの横にこの一文を貼っておけば、入ったばかりのスタッフでも初日から同じように言えます。
カードがいっぱいになって特典を渡すときは、その場で新しいカードを、おまけの2つを押した状態で一緒に渡します。特典を受け取った瞬間は、お客さまがお店をいちばん好意的に見ているときだと私は考えています。ここでカードが途切れると、また来る理由もいったん途切れます。今日の分は前のカードの最後の欄に入っているので、新しいカードはおまけの2つだけで、残りは10回です。言葉は「こちら新しいカードです。もう2つ押してあるので、あと10回です」で足ります。
景品表示法と個人情報で確認しておくこと
特典が景品表示法の「景品類」に当たるかどうかで、扱いが変わります。消費者庁の景品規制Q&A(景品類ではないもの)では、同じ対価で同じ商品を付けることは「値引と認められる経済上の利益」に当たり、景品規制の対象にならないとされています(Q43)。例として「コーヒー5回飲んだらコーヒー1杯無料券をサービス」が挙がっています。次回以降の自店での支払いの一部に充てられるポイント(Q39)や、自店で次回以降に使える割引券(Q37)も、同じく値引として扱われています。花屋の「次回200円引き」はこの形です。どれも、取引通念上妥当な基準に従っていることが前提です。
一方、特典を別の物(オリジナルの手ぬぐいなど)や他の事業者のお店で使える券にすると、景品類として「総付景品」の上限がかかる場合があります。消費者庁の景品規制の概要では、総付景品の最高額は取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2です。ポイントを値引きにも景品にも使えるようにすると、そのポイントは景品類として扱われます(Q49)。迷うなら、自店の値引きだけに使えるポイントにしておくのが無難です。スタンプカードで取引価額をどう数えるかは、ここでは断定しません。同じ商品以外を特典にするなら、始める前に消費者庁の運用基準を確認するか、問い合わせてください。
紙のカードに名前を書いてもらわないなら、個人情報の話は出てきません。名前や電話番号を申込書や入力フォームで書いてもらうなら、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)に目を通しておいてください。本人から書面などで直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示すること(法第21条第2項)、その利用目的はできる限り具体的に特定すること(法第17条第1項)が求められていて、「事業活動に用いるため」のような書き方では特定したことにならないとされています。申込書には、たとえば次のような一文を入れます。
「ご記入いただいたお名前と電話番号は、ポイントの管理と、お取り置きなどのご連絡のために使います。」
迷う点があれば、個人情報保護委員会に確認してください。
明日から変えること
- 常連さんの来店頻度で「有料の欄の数 ÷ 来店頻度」を計算し、満了が3か月を超えるなら欄を減らす
- 毎回同じ物が売れる店はスタンプ、買う物も金額もばらばらな店はポイントか「500円ごとに1個」
- 欄を2つ増やし、最初の2つを押した状態で渡す(有料10回なら12欄)。特典を渡すときも、新しいカードを同じ状態で
- 特典の負担は仕入れ値〜売価のあいだ。ふだん買わない物(同じ商品のサイズアップなど)を特典にするほど軽くなり、値引きは引いた額がそのまま負担
- カードはお釣りと一緒に、「残りの回数」と「もらえる物」を一文で伝える。今日の分を押したかどうかで回数をそろえる