在庫管理·2026年11月3日·8分で読めます

営業中の棚卸しのやり方|止めるのは「一つの棚」だけ

在庫を数えるために店を閉める必要はありません。止めるのは棚一つだけ。区画の分け方、時刻の記録、数えた数ではなく「差」を入れる理由まで、小さな店が営業しながら棚卸しをする手順です。

AIの支援を受けて執筆し、事実確認を行いました。

営業中の酒屋で、店員二人が日本酒の一升瓶が並ぶ木の棚の前に立ち、一人が瓶に手を当てて数え、隣の一人がノートに書き込んでいる。数えている段の縁にはマスキングテープが一本貼られ、奥のレジでは客が会計している。

18時、レジを締めたあとで、10時に数えた日本酒の棚の数を入力します。画面の在庫はきれいに揃い、今日の仕事は終わった気がします。ところが、10時から18時までに売れた3本は、この入力で帳簿から消えています。営業中の棚卸しでいちばん多い失敗はこれで、数え方ではなく「入れ方」の問題です。

在庫を数えるために店を一日閉める必要はありません。止めるのは店ではなく、いま数えている棚一つだけです。棚の前に二人、レジに一人、閉店後に数字を確定させる店主が一人。酒屋でも文房具店でも自転車店でも、この分担があれば営業しながら棚卸しができます。

店を区画に分けて、地図を一枚つくる

最初の仕事は、数えることではなく分けることです。店の見取り図を紙に描き、棚ごとに記号を振ります。酒屋なら「A 冷蔵ケース」「B 日本酒」「C 焼酎」「D ワイン」「E バックヤード」くらい。文房具店なら筆記具、ノートと紙、画材、事務用品、レジ前の小物、という分け方になるでしょう。

区画の大きさの目安は、二人で15分以内に数え終わる量です。それより大きいと、数えている間に売れる品が増え、どこまで数えたかも曖昧になります。大きな棚は段で分けて「B-1」「B-2」としておけば足ります。一つの区画だけを数える部分棚卸しを、一日に一つか二つ。それで十分に回ります。

気をつけたいのは、同じ品が二か所に置いてある場合です。システムの予想数は品ごとの数で、棚ごとの数ではありません。予想が14本の四合瓶が棚Bに12本、バックヤードに箱で2本あるとき、棚Bだけを数えると、本当は1本も減っていないのに「マイナス2本」と出ます。二か所に置く品は地図に印をつけておき、その品を数える回にはバックヤードや冷蔵ケースの分も同じ時間に数えて、合計を書きます。

地図はレジ横に貼り、数え終わった区画に日付と時刻を書き込みます。どの棚がいつ最後に数えられたかが、誰が見ても分かるようになります。

文房具店の白い壁にマスキングテープで留めた手描きの店内見取り図。棚の区画が色鉛筆で五色に塗り分けられ、手前の木のカウンターにペン立てと黄色い付箋がある。
区画の目安は、二人で15分以内に数え終わる量。数え終えた区画には、日付と時刻をこの図に書き込みます。

空いている区画を、空いている時間に数える

区画ができたら、静かな時間と静かな場所を組み合わせます。開店直後の30分、平日の昼過ぎ、雨の日の午後。逆に、レジ前の小物や冷蔵ケースのように客の手がよく伸びる区画は、夕方の混む時間には触りません。

自転車店なら、修理の受付が落ち着く時間にチューブやブレーキシューの引き出しを。金物店なら、職人さんが朝のうちに買いに来る釘やビスの棚は、昼を過ぎてから。どの区画がいつ静かかは店主がいちばんよく知っていますが、迷ったら直近数週間の時間帯別の売上を見て決めれば大きく外れません。

棚に「棚卸し中」の印をつけ、時刻を書く

数え始める区画には、棚の縁にマスキングテープを一本貼ります。目立つ札は要りません。お客様には普段どおり買ってもらい、スタッフにだけ「この棚は今数えている」と伝わればいいのです。

そして、数え始めた時刻と数え終わった時刻を、記録用紙のいちばん上に書きます。これが後で効いてきます。時刻のない棚卸しの数字は、いつの在庫なのかが分からないので、正しく入力しようがありません。

数えている途中にその棚から商品が売れたら、レジの人が「B-2から一本出ました」と声をかけ、書く係がその時刻と品名をメモします。区画を15分に収めておけば、こうした割り込みは一回にせいぜい一、二度です。このメモは、後で差を出すときに使います。

入荷も同じ考え方で扱います。数えている最中に届いた段ボールは、その区画が終わるまで開けずに置いておく。数え途中の棚に新しい品を並べると、まだ入荷登録していない分が「余り」として出てきて、どこから来た差なのか分からなくなります。

営業中の棚卸しでいちばん多い失敗:10時の数を18時に入れる

冒頭の話を数字でたどります。ある純米酒の四合瓶で考えてください。

  • 10時。システム上の在庫は14本。棚で数えると12本でした。
  • 10時から18時までに3本売れ、システムの在庫は11本になっています。
  • 18時に「12本」と入力すると、在庫は12本に書き換わります。

実際に棚にあるのは、12本から3本を引いた9本です。帳簿には3本多く残り、その日の売上がなかったことになります。しかも、本当に調べるべきだった「10時の時点で2本足りない」という事実まで、一緒に消えています。

正しいやり方は、数えた数そのものではなく、差を入れることです。10時にシステムが予想していた14本と、数えた12本の差はマイナス2本。18時に入れるのは、このマイナス2本だけです。11本から2本を引いて9本。棚と帳簿が合います。

数えている途中に売れた品の直し方

数えている途中に売れた品は、さっきのメモで直します。数え始めた時刻の予想数を書き写した用紙なら、まだ数えていない品が売れたときは、数えた数に足し戻してから差を出します。予想14本で、その品に手が届く前に1本売れ、棚で数えたら11本。差は11+1−14でマイナス2本です。足し戻さなければマイナス3本になり、ないはずの1本を探すことになります。もう数え終わった品が売れたときは、何もしません。その1本は予想数にも数えた数にも入っていて、差には影響しないからです。

だから記録用紙には、品名と数えた数の横に「数え始めた時刻にシステムが予想していた数」と「途中の販売」の欄をつくります。区画を数える直前に、その区画の品の在庫数を画面で確認するか印刷しておけば、予想数の欄は埋まります。記入例はこうです。

区画開始・終了時刻品名予想数数えた数途中の販売差数え直し
B-210:00〜10:15純米酒 四合瓶14120−2済・12(別の人)
B-210:00〜10:15本醸造 四合瓶981(数える前)0不要

手間は列が二つ増えるぶんだけですが、この二列があるから営業しながら棚卸しをしても数字が狂わないのです。POSの在庫カウントを使う場合は、予想数の取り方が変わります。VoViでは、保存した時点の予想数を数えた数の横に記録し、差だけを在庫に反映します(全プランで使えて、棚の前でバーコードを読み取りながら数えることもできます)。だから区画は数え終えたらすぐに保存します。数える前に売れた分は、予想数からも数えた数からもすでに抜けているので、足し戻しは要りません。数えた後、保存する前に売れた品だけは、数えた数から引いてください。棚で12本と数え、保存する前に1本売れたら、入れるのは11本です。

二人で数える。一人が数え、一人が書く

一人で数えて一人で書くと、数を声に出さないまま記録するので、どこで間違えたかを後から追えません。二人いるなら、片方は商品に触って数えるだけ、もう片方は書くだけにします。

数える人が「〇〇の四合、7」と言い、書く人が「〇〇四合、7」と復唱してから書く。回りくどく見えますが、似た名前の銘柄や色違いのノートを取り違えたとき、復唱した瞬間に気づけます。書く係は時刻の記録とレジからの声かけも引き受けるので、数える人は棚から目を離さずに済みます。

バーコードで数える場合も役割は変わりません。一人が読み取り、もう一人は棚の奥や下の段に読み漏れが残っていないかを見ます。一段ずつ商品に触る作業なので、値札の確認を同時に済ませるのにも向いています。税込価格の表示を見直したい店は、総額表示の値札チェックの手順と組み合わせれば、同じ時間で二つ片づきます。

数え直すのは、差が許容範囲を超えた行だけ

差が出た行を全部数え直していたら、営業中の棚卸しは終わりません。許容範囲を先に決めておきます。例えば、単価の高い品は1個でも差があれば数え直す。ボールペンや付箋のような安い品は、数量で3個、または金額で1,000円を超えたら数え直す。基準は店ごとに決めてかまいませんが、必ず数える前に決めて紙に書いておきます。数えた後で決めると、面倒な行を見逃す言い訳になるからです。

数え直しは、できれば最初とは別の人がやります。同じ人が同じ棚を見ると、同じところで同じ数え間違いをしがちです。それでも差が残った行が、本当に調べるべき行です。万引き、入荷の登録漏れ、レジでの打ち間違い、別の棚への置き忘れ。原因探しはそこから始めます。

閉店後、差を入れて署名するのは店主

差を入力する人は一人に決めます。いちばん自然なのは店主です。閉店後、その日数えた区画の用紙を集め、数え直しまで済んだ行の差だけを入れます。二人がそれぞれ入れると同じ差が二重に引かれ、誰も入れなければ差はどこにも残りません。POSで区画ごとにすぐ保存する店では、数え直しも保存の前に済ませ、店主の閉店後の仕事は入力ではなく、その日の保存記録と用紙を突き合わせて署名することになります。

入れ終わったら、用紙のいちばん下に入力した日付と時刻を書き、署名するか印鑑を押して綴じます。数えた人と確定させた人が用紙の上で分かれていれば、後で差の理由を確かめるとき、誰に聞けばいいかがすぐ分かります。原因が分からないまま残った行には「未解決」と書き、次にその区画を数えるときに最初に確かめます。

循環棚卸しで、決算前の棚卸しを「確認」に変える

区画と時刻の仕組みができれば、全部を一度に数える理由はなくなります。区画ごとに数える頻度を変えればいい。これが循環棚卸しです。

  • よく売れる品と単価の高い品は、毎週か毎月。酒屋ならウイスキーや贈答用の日本酒、文房具店なら万年筆、自転車店ならバッテリーやタイヤ。
  • 普通に動く品は三か月に一度。
  • ほとんど動かない品は年に一、二回。

高い品や回転の速い品は、差が出たときの損が大きく、原因もまだ記憶が新しいうちに追えます。動かない品を毎月数えても、ほぼ毎回同じ数が出るだけです。数える手間は、損が出やすいところに寄せます。

決算の棚卸しそのものはなくなりません。決算日の在庫は数量に仕入単価を掛けて金額にし、その年の売上原価の計算に使います(J-Net21「いまある在庫の金額は、どうやって計算すればよいでしょうか?」)。それでも一年かけて区画を回してきた店なら、決算前の棚卸し(個人事業なら12月末)は「合っているはずの数を確かめる」作業になり、差の出る行も、数え直しの時間も減ります。

決算で作った棚卸表は、決算関係の書類として保存が必要です。国税庁の案内では、青色申告なら7年、白色申告なら5年とされています(国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」)。区画ごとの時刻と店主の署名が入った記録用紙をそのまま綴じておけば、後から見返しても、どの数がいつのものか説明がつきます。評価方法など税務の細かい点は、税理士や最寄りの税務署に確認してください。

棚卸しの日をカレンダーに書き込む前に、まず見取り図を一枚描いてみてください。明日の開店後30分で区画Aを数えれば、それが一回目です。

明日からやること

  • 見取り図を描き、二人で15分以内に数えられる区画に分け、二か所に置く品には印をつける
  • 数える棚の縁にテープを貼り、開始と終了の時刻を記録用紙に書く
  • 入れるのは差だけ。紙の用紙なら数える前に売れた分を足し戻し、POSで数えるなら区画を数え終えたらすぐ保存する
  • 許容範囲は数える前に決め、超えた行だけを別の人が数え直す
  • 差を入れる人は一人に決め、閉店後に店主が用紙と記録を確かめて署名する